最近のギフトカタログに見るクラフトトレンド
バレンタインデー・ホワイトデーから始まって、
卒業・入園入学など、うれしいことや思い出にしたいことがいっぱいありそうなこの季節。
流通小売の業界でも、
そんなニーズを捉えた売場づくりをそれなりに行っている。
特に伝統的にコンサバな需要に強い百貨店では、
ギフトカタログを制作しているところも多い。
そんな百貨店のギフトマーケットへのメッセージが
変わって来ているように感じる。
京都の老舗陶器会社の経営危機が、メディアで報じられたのは最近のことだが、
ニュースでも、そのビジネスモデルが生活スタイルの変化に対応できていない点が指摘されていた。
例えば、一揃い5客セットなどの商品構成が、
パーソナルなギフトニーズに適合していないというのだ。
最近の百貨店のギフトカタログは、
そうした従来型の価値観を何とか脱しようとしているか、少なくともメインターゲットを個人に絞り込んでいる。
贈る相手だけではなく、贈り手も女性にフォーカスし、
自分が素敵だと思うものを相手に贈る、或いは相手を「想う」気持ちが伝わるシーンをイメージしているようだ。
そして、それ以上に重要な存在として位置づけられていそうなのが
メッセージカードだ。
飛躍しすぎかも知れないが、
ウエディングといった非日常的なシーンで広がったペーパーアイテムというカテゴリーの存在も、
これに関連している可能性がある。
無機的な既製品ではなく、
本人たちが考えたというオリジナリティから
伝わる「想い」を伝えたいというニーズは、
広くコミュニケーションの媒介となるギフトに
共通しているのではないだろうか。
贈り手のセンスを窺わせる様々なテイストのメッセージには、
当然贈り手からの手書きの文字で言葉が綴られる。
デジタルメディアでのコミュニケーションが日常化している今日、
「面倒くさくないのか?」という疑問も頭をよぎるが、
これもまた1,000円~3,000円といった価格帯で、
書き味良く、オシャレなカジュアル万年筆がヒット商品になっていることを考えると、
手書きしたい気持ちが強いのだとわかる。
利便性や合理性に支えられたカタログギフトや、
それにまつわるデジタルなギミックが広がっている一方で、
アナログというよりも、
クラフトと言った方が良いギフトの志向が強くなっている。
クラフトの志向は、ファッションやフード、ホームインテリアと、
幅広いジャンルで見出すことが出来るが、
今までは単純に、カスタマイズと括られていたニーズだったように思う。
しかし、背景にあるのは、
自分と他者のコミュニケーションを大事にしたいという気持ち
なのだろうと思うようになった。
クラフトとコミュニケーションが広げるマーケットは、今後もきっと拡大して行くのだろう。
Kikuchi